文学館あちらこちら

第10回

北海道立文学館

 北海道立文学館は中島公園の緑に囲まれている。近代的な外観だが、周囲の景色に意外と馴染んでいる。一階受付で入場料を払い、常設展示室のある地下へと階段を下りる。展示はここ一室だけで、項目は盛りだくさんだが、広いので窮屈さは感じない。部屋の中央には休めるように椅子も多く置いてある。
 『北海道文学の流れ』のタイトルが示す通り、札幌農学校時代の有島武郎から始まって昭和後期まで、北海道にゆかりのある文学者の作品・書簡等が数多く陳列されている。作家にまつわる様々なエピソードも面白い。
青空文庫にも収録作品の多い有島武郎については「北海道文学の父」とも呼ばれており、個人雑誌『泉』(7号で終刊)、妻・安子の死を悼んで発行された『松むし』や木田金次郎に宛てた書簡など多数が展示され、『或る女』のヒロイン・葉子のモデルである佐々城信子と国木田独歩とのロマンスなどの逸話も知る事が出来る。
 明治から大正・昭和に至るまで来道した作家は多い。明治期では、石川啄木・国木田独歩・幸田露伴、大正に入ると、田山花袋・宮本百合子・佐藤春夫らの名が見られる。
 昭和前期のプロレタリア文学コーナーでは、非業の死を遂げた小林多喜二についてスペースが多く割かれており、中でも、母セキが息子に手紙を書きたい一心で、家族にも内緒で文字を覚えようとした遺筆が展示されており、稚拙だが一生懸命に書かれた文字に、子を思う親の愛が感じられ、見る者の気持を切なくさせる。
 北海道の各地を舞台にした小説は多い。青空文庫では、有島武郎『カインの末裔(ニセコ)』『星座(札幌)』、国木田独歩『空知川の岸辺(歌志内)』、さらには、明治の頃に道内を漂泊した歌人・石川啄木の『初めて見たる小樽』を読む事が出来る。
 そのほかとして、「アイヌの口承文芸」を今に残すべく苦労してきた人々の研究資料や、「千島・樺太文学」の作品群など、北海道独特の文芸も展示もされている。
 北海道立文学館は収蔵資料の充実を常に図っており、展覧順序の最後には、今回受託されたばかりの本庄陸男の研究資料が公開されていた。その横に北海道ゆかりの作家十数名の直筆原稿を見ることが出来る棚があり、地方紙に掲載された文学関係記事のスクラップなども置いてある。
 1階の閲覧室では、北海道に関わりのある作家の全集や関係資料の閲覧とビデオ作品の鑑賞が自由に出来る。書籍・ビデオテープともに館外貸出しは行っていないが、コピー等の相談に随時応じている。(2000.7.18 加藤恭子、写真:大野 晋)

●所在地:〒064-0931 札幌市中央区中島公園1番4号
●電話:011-511-7655
●HP:
http://www.welcome.city.sapporo.jp/tourism/j/syousai/f010.html

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