第15回

早稲田大学坪内博士記念 演劇博物館

 都の西北、早稲田の杜に、日本でも珍しい演劇専門の博物館である早稲田大学坪内博士記念 演劇博物館が建っている。ここは、作家であり、劇作家であり、教育者であった坪内逍遥の古稀と「シェークスピヤ全集」全40巻の完結を記念して、設立された。
 博物館の外観は、シェークスピア時代の英国の劇場フォーチュン座を模しており、正面の大きな屋根の正面にはラテン語で「全世界は劇場なり」と書かれている。そして、その左となりの方に、坪内逍遥のブロンズ像が、少しコミカルにも見える様子で、まるで私達訪れた人達に「ふふふ、人生は演劇だよ!」とでも言いたげに立っている。
 館内に入ると、1928年に建てられた当時のような装飾がなかなか感じが良い。館内を歩くと、最近補修工事がされたとは言え、ぎしぎしと時代がかった音がする。展示は、演劇に、特に日本の演劇に関する古代から現代までの系統的な展示が目を引く。また、シェークスピアに関して、一室を費やしているのもこの館らしい。
 このときは、企画展として、渡辺えり子の率いた「劇団3○○」に関する展示を行っていたが、なかなか、演劇の舞台を見るようで面白かった。
 1階は、演劇に関する図書館となっており、早稲田大学のWEBサイトから文献目録を検索できるようになっている。文学館というよりも、むしろ、演劇に関する資料館といった感じの蔵書である。
 また、2階の一室は、逍遥記念室となっており、大きなテーブルの周りの壁を一周すると、坪内逍遥の足跡を辿ることができる。特に、坪内逍遥のシェークスピ’ヤ’全集は、現在入力中なこともあり、興味を持って見ることができた。(青空文庫にも逍遥翻訳の本が収録されている)
 ちなみに、毎週金曜日にはボランティアの解説員が展示の解説を行っているそうである。
 一日、文庫本を片手に訪れても良いし、博物館の前のベンチに佇みながら、携帯端末に入れた青空文庫所蔵の戯曲なんぞを読むのも面白いだろう。そして、薄暮れの闇の中に、博物館の暖かい色の光を見るのも、心温まる気分になれるかもしれない。
 もしかすると、そんな時、坪内逍遥のブロンズ像がなにかを語り掛けてくれるかもしれませんよ。(大野 晋)

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