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文学館あちらこちら

第6回
神奈川近代文学館

横浜港を眼下に見下ろす港の見える丘公園に隣接して、赤い煉瓦造りの大仏次郎記念館から霧笛橋と名付けられた橋を渡ったところに、神奈川県立の神奈川近代文学館が建っている。
神奈川近代文学館は、近代文学の歴史を展示により紹介する展示館と収集された資料の閲覧ができる本館(閲覧室)から成っている。奥まったところに建つ展示館は、通常、2つ常設展示されている。まず、入ったなり通される一番目の展示のテーマは、「神奈川県ゆかりの文学作品」であり、横浜、鎌倉、箱根、湘南、川崎といった場所を舞台にした作品を、紹介している。ここでは、青空文庫にもおなじみの中島敦の「かめれおん日記」、有島武郎「或る女」、「一房の葡萄」(いずれも横浜)、岡本かの子「川」(川崎)、牧野信一「父を売る子」、「ゼーロン」、芥川竜之介「トロッコ」(以上、県央・県西)、北原白秋「雲母集」(三浦)、夏目漱石「門」「こころ」(鎌倉)といった作者の作品がその作品の舞台とともに紹介されている。
二番目の展示は、近代文学を明治から現代までを時代ごとに追う「近代日本文学史」というべきもので、非常にわかりやすい解説と展示により、触れた作品の興味をひくようにできあがっている。展示内容に関する部分の説明は省くとして、青空文庫に収められている作者と作品が数多く出てきて、なかなか興味深いものである。一例を挙げると、
明治期の文学:二葉亭四迷「平凡」、樋口一葉「たけくらべ」、与謝野晶子「みだれ髪」、田山花袋「田舎教師」
大正期の文学:夏目漱石、森鴎外、島崎藤村、芥川竜之介など
昭和期(戦前):横光利一、葉山嘉樹
   (戦後):太宰治
といった作家達が紹介されていた。また、大衆文学にも大きく解説が割かれており、探偵小説の江戸川乱歩、佐左木俊郎、海野十三らの「新青年」や、捕物帖の佐々木味津三、岡本綺堂らの作品が紹介されていた。
全体として、内容はてんこ盛りといった印象を受けるが、決して消化不良となるような盛り方ではなく、展示を噛めば噛むほどに面白味が増してくる印象を受けた。
是非、多くの人が訪れて、作品に興味を持ってもらうことで、青空文庫に所蔵されている作品たちがより生き生きとしてくる、そんな予感のする文学館である。
また、本館の資料は書架方式ではなく、カウンターで閲覧したい資料を出してもらうタイプの資料館(図書館)だが、より詳しく調べたい人達には有効な施設だろう。欲を言えば、一般の図書館、もしくは書店が近くに欲しいところだ。
(1999.11 大野 晋)

    ●所在地:〒231-0862 神奈川県横浜市中区山手町110番地
    ●電話:045-622-6666
    ●開館時間:展示室 9:30-17:00(入館は16:30まで)
    ●休館:月曜日、祝日の翌日(土・日は開館)、年末年始
    ●HP:http://www.kanabun.or.jp/


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