文学館あちらこちら

第8回
川崎市市民ミュージアム


 川崎市のほぼ真ん中、多摩川沿いにある等々力緑地は、体育館、ヴェルディ川崎が本拠地とするサッカー場、陸上競技場などがある総合運動公園となっている。その一角に、川崎市の川崎市市民ミュージアムが建っている。川崎市市民ミュージアムは、有料のミュージアム部分、映像ホール、ビデオライブラリ、図書館、レストランからなる総合文化施設だ。この有料ミュージアム部分の一角に、川崎ゆかりの岡本かの子、佐藤惣之助の文学コーナーが、陶芸、日本画、彫刻といった作家の作品とともに展示されている。
 さて、取材日はちょうど、企画展として、アメリカの近代版画の歴史を辿る企画展示を行っていたが、この「ミュージアム」は、どちらかというと、美術中心の展示方式を取っており、文学館という面持ちではない。しかし、アンディ・ウォーホールなどの収蔵作品には見るべき物が多く、その近代、現代の美術作品の収集は興味深い。また、広いエントランスの中には、手塚治虫の「笑い」という彫刻作品が展示されていることからも解るように、手塚治虫に限らず、漫画も収集の対象となっており、東京パック、大阪パックといった初期の漫画誌の展示も非常に興味深く見ることができる。このほか、川崎の歴史について、今、はやりの視聴覚装置やジオラマで展示している。
 目的の岡本かの子、佐藤惣之助の展示だが、各自の年表と初版本(外観)の展示のみとなっており、それぞれの作品に触れることはできない。どちらかというと、いっしょに展示されている美術・工芸作品の展示と同様の「本」の展示になってしまっており、文学独自の鑑賞方法である「読む」という行為で作品に触れることができないのが残念である。
全体を見た後、ミュージアムショップでこの2人の作品が買えるかどうかみてみたが、数冊の岡本かの子の本はあったが、いかにも、添え物の感は拭えなかった。
中庭には、実際に日本鋼管で使われていたトーマス転炉が置かれていて、現代彫刻のような良い味を出していたりと、非常に面白い素材を持つ施設ではある。しかし、「ミュージアム」と日本語の意味をわざとあいまいにする言葉を使っているように、全体としてのアンバランスと煮詰め不足を感じた。素材を旨く自分の中で組み立てられた人には面白いだろうが、何かを感じようと漠然と出かけると混乱してしまうかもしれない。
 どちらかというと、岡本かの子、佐藤惣之助の作品のファンよりも、漫画という新しいジャンルの書物に興味のある人にお勧めの施設なのかもしれない(大野 晋)

  ●所在地:〒211-0052 神奈川県川崎市中原区等々力1−2(等々力緑地内)
  ●電話:044-754-4500
  ●開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
  ●休館:月曜日(祝日と重なる場合には開館)、
   祝日の翌日(土・日の場合は開館)、
   年末年始
  ●HP:http://www.dnp.co.jp/museum/kawa/kawa.html


ちへいせん目次へ