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文学館あちらこちら

第3回
小田原文学館・白秋童謡館

 小田原駅から小田原城方向に降り、海に向かって国道1号線を渡ると、古い住宅地の中に建っている。入り口には「小田原文学館」と書かれ、その奥に3階建ての洋館がひっそりと建っている。この洋館が小田原文学館だ。
 小田原は古くから多くの文人を輩出した。詩人の北村透谷、小説家の尾崎一雄、川崎長太郎、牧野信一など。また、地理的に海山ともに兼ね備え、後ろに箱根を抱えるこの地に移り住む文人も少なくなかった。詩人で童謡作家の北原白秋、同じく詩人の三好達治、小説家の谷崎潤一郎、斎藤緑雨、「道楽」物を書いた村井弦斎、坂口安吾らである。これらの文人の人と作品を紹介するのがこの文学館の目的のようだ。
 まず、入り口を入ってすぐに目を引く文学館の建物は、幕末の志士であり後の宮内大臣であった田中光顕の別邸を使用しているとのことで、昭和12年建築の洋館は、洋風の庭とともにノスタルジックな香りを醸し出している。
 館内に入ると、正面に受付けがあり、1階と2階の2室ずつが展示室になっている。展示品は先に紹介したような詩人、小説家の自筆原稿や小説の本が中心で、文学史上の分類や時代背景、交友関係の分類というよりも、雑多に並んでいる印象を受けた。また、1階、2階とも1部屋ずつがサロンのようになっており、観覧者が寛げるようになっている。しかし、展示品に比較してサロンが大きく、場所がもったいないような気分がしたが、いかがなものだろうか?
 この洋館を出て、洋風の庭を横切り、白秋の童謡の碑のある小路を通ると、古い民家の横に出る。この民家が「白秋童謡館」だ。こちらの建物は大正13年に建てられたとのことで、和風の庭とともにこの一角が少し昔にタイムスリップしたかのような感覚にとらわれる。案内表示に導かれ、玄関の引き戸を開けると、予想していたように大正から昭和初期に立てられた家が出迎えてくれる。こちらの1階部分が白秋童謡館であり、展示品は奥の1部屋に集まっている。主に北原白秋を紹介するパネルと赤い鳥を中心とした作品の展示だが、特にマザーグースに1区画が割かれており、白秋のマザーグース(青空文庫にも収録されている)と他の作家の訳の比較や童謡の紹介がされている。
 実は、こちらの童謡館にはもうひとつの楽しみがあるのを私は見つけた。この建物自体がタイムカプセルと化しているのである。たとえば、急な階段の裏側や狭い廊下、古い照明のついたトイレ、まだ使われている流し、それら全てに、たとえば、「となりのトトロ」を見た時に私達が感じるノスタルジーな感じがする魔法がかかっている。時間が許すなら、裸足で(もちろん日本家屋の館内は土足厳禁、スリッパなしである)畳の感触を味わいながら蜩の音でも聞いて、奥の庭に面した部屋から庭をぼおっと見ていると、白秋の懐かしい童謡の世界が目の前に甦ってくるような、そんな不思議な感じがした。
 2館の展示を見て、建物にはそれなりの共感を持って見られたが、あまりにもレトロな感覚が、作家たちの作品を歴史の中に置き去りにしてしまう、そんな感じを受けた。できれば、興味を持った作家たちの作品が手に持って読め、もしくは購入できるような仕組みなら、納められた作家が、今にもっと生きて来るのではないだろうか。
 まあ、北原白秋の「まざあ・ぐうす」をパームトップPCに入れて、一日、訪ねてみるもの面白いかもしれない。(1999.8.27 大野 晋)

  ●所在地:〒250-0013 神奈川県小田原市南町二丁目3番4号
  ●電話:0465-22-9881
  ●開館時間:9:00-17:00(入館は16:30まで)
  ●休館:12月28日〜1月4日
  ●HP:http://www.city.odawara.kanagawa.jp/kanko/meisho/hakubutu.html


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