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文学館あちらこちら

第11回

仙台文学館

 仙台と聞いて想起するものといえば……杜の都、伊達政宗、七夕祭り、いや、それより何より、なぜか人気のある土産品「萩の月」? ……なんて戯言はともかく、1999年3月に開館した仙台文学館は、市の中心部をやや離れた台原森林公園に隣接している。杜の都の名にふさわしい立地というべきところだが、惜しいことに、樹木に囲まれてはいるものの、コンクリート+ガラスの無骨な箱形の外観で、あまりフォトジェニックではない(ゆえに全景写真はございません、あしからず)。しかし中へ入ると、木製ブロックが効果的に用いられた床が、あしうらに心地よい。ガラスを多く使ってあるため採光の具合も良く、明るい雰囲気。

【常設展示】
「新しき詩歌の時代」「学都・仙台の青春群像」「学都に集う」「うたのことばに生きて」の四部構成。なるほど、入場料400円の根拠は、各コーナーあたり100円ってことなのかも……おっと、また戯言。

 まずは総論。
 ほぼ予想どおり、仙台および宮城県に多少なりともゆかりのある文人を、すべからく紹介しようと努めているような展示内容。と言ってしまえばミもフタもないが、正直なところ、全体的な印象はこれに尽きる。

 おもむろに各論。

◆新しき詩歌の時代――落合直文、島崎藤村、土井晩翠
 このコーナーが常設展示のいちばんの目玉であるらしい。落合は、宮城県の最北端・気仙沼出身で、詩歌の革新に取組んだことで評価されている歌人。藤村は、東北学院赴任中に作った詩がかの有名な『若菜集』に収められているという縁がある。「荒城の月」の作詞者として知られる晩翠は、仙台に生れ、終生仙台で過した人物。3名ともひとしなみに大きくとりあげられていたが、展示内容には特に可もなく不可もなく、おしなべて印象に残りにくい感があった。仙台文学館としては、仙台以外にもあっちこっちにゆかりがたくさんあるメジャーな藤村よりも、バリバリ地元民でマイナーな落合と晩翠を、よりいっそうクローズアップすべきであろう。
 展示室の一角に、晩翠や藤村の詩歌の朗読ビデオなどを鑑賞できるコーナーがあった。そうだそうだ、詩歌は黙読するばかりでなく、声に出して読みまた音で聴く楽しみもあるのだ。これはなかなかよい趣向かもしれない。と思い、さっそくヘッドフォンを装着し、再生してみる。しかしこのビデオ、どうにもいただけない。まずもって、肝腎の朗読の出来があまりよろしくない。さらに、背景に流れるイメージ画像は、さながらカラオケボックスに迷い込んだかのよう(とまで言うのはちと大げさかな)。「とりあえず雰囲気づくりをしてみました」的な処理で、せっかくの素材を台無しにしてほしくはない。僭越ながら。そんなわけで、みなまで聴かず、早々にヘッドフォンをはずしてしまった。

◆学都・仙台の青春群像――真山青果、魯迅、高山樗牛、岩野泡鳴ほか
 顔ぶれをざっと眺めて「おや、ちょっとおもしろそう」、しげしげと眺めたのち「あっ、そう。それで?」……つまるところ、「へええ、この人も仙台にいたことがあるのか」などとめずらしがりながら見学するにとどまってしまった。こんな感想しか持ち得なかったのは、当方の器の小ささによるところ大なので、スミマセン。気に入った展示品は、押川春浪が誰か(失念)に送った、味のあるイラスト入りのハガキ。

◆学都に集う――東北帝国大学の教授陣、数々のミッションスクールほか
 仙台らしいカラーがよく出ているという点で、このコーナーが最も興味深かった。東北帝国大学の教授陣(たとえば小宮豊隆、阿部次郎、木下杢太郎など)を中心として形成されていた、種々の文人サロン。押川春浪の父が創設した仙台神学校(のちの東北学院)をはじめとする数々のミッションスクールに学び、また教鞭を執った人々や、山村暮鳥など伝道師として来仙した人々の業績。中央文壇とは一線を画していた、かどうかは分らないが、仙台を中心に発行されていた、さまざまな文芸誌。等々。「白河以北一山百文」だの「文化度が低い」だのと蔑まれた東北の地も、どうしてなかなか、まあまあそれなりに文化的だったのね、という様子がしのばれる。

◆うたのことばに生きて――尾形亀之助、石川善助ほか
 当方も気に入っている亀之助くんの詩は、ここ「ちへいせん」でも読めるし、「せんだい電子文庫」にも登録されているので、拙稿で詳述するには及ぶまい。今年(2000年)11〜12月には、生誕百年記念の特別展も予定されている。石川善助は夭逝の詩人で、寡聞にして当方はまったく知らなかった。彼の詩が掲載された文芸誌『新韻』の復刻コピーや、彼の死後に刊行された遺稿集『鴉射亭随筆』などが展示されていた。『鴉射亭随筆』には宮沢賢治に関する一文も収められているそうで、この本を贈呈された賢治は、その文を読んで涙を流したとか。「賢治くんを泣かせた文章ってどんなのだろう」と思えども、その場では読むことができないのが歯がゆい。まめな人ならば、あとから自分で本を探すなり何なりして読むかもしれないが、ずぼらな見学者としては、展示品解説で触れている文章だけでも、その場ですぐにコピーなり何なりが読めるよう配慮されていれば、たいへんありがたいのだが。

【企画展示】
 夏休み期間中だったため、企画展示室は子どものための「えほんのひろば」になっていた。子どもと子どもの本について書きはじめると長くなるので割愛させていただくとして、過去の企画展に目を向けてみると……
 仙台文学館開館記念第一弾の企画展は、意外にも夏目漱石であった。「漱石と仙台なんてぜんぜん関係なさそうなのに、何故に第一弾が漱石?」「地元の作家を特集すべきではないのか?」このような疑問が少なからず寄せられたらしい。(もっとも、漱石と仙台とはまったく関係がないわけではなく、小宮豊隆の縁で、東北大学図書館に漱石文庫が寄贈されている。)
 そういった、当然と言えば当然の疑問に対し、井上・遅筆堂・ひさし仙台文学館長は、次のように答えている。「特産品や地ビールなら地域限定とか郷土色とかも結構だが、文学は地方の特産品とはちょっと違うのではないか。よい作家、よい作品は、地域を超えるものではないだろうか」云々。(←立ち読みした冊子の内容を乱暴に意訳したので相当に不正確かもしれませんスミマセン冊子をちゃんと買えばよかったんですけどケチってしまいましたホントにスミマセン)
 いささか苦し紛れのようにも見える井上館長の回答はしかし、地方の文学館のありかたについて、考えさせられる発言ではあるかもしれない。その地方ならではの企画が大切なのは言うまでもないが、“仙台”文学館は仙台“文学”館でもあるわけだ。地方色を活かした企画展示と地方色にとらわれない企画展示とのバランスや各々の充実度は、仙台文学館のみならず、他の文学館にも共通して問われる事柄であり、悩みの尽きぬところでもあろう。……うーん、やはり苦し紛れにむりやりまとめてしまった。

【設備その他】
 3階の常設展示室、企画展示室に加え、2階には講習室、情報コーナー、交流コーナー、喫茶室がある。展示を見て興味を持った作家の本を、情報コーナーで探して閲覧するもよし、喫茶室「杜の小道」(だったかな?)や交流コーナー(自販機ドリンクなど飲めるラウンジ風の一角)で、疲れた足やあたまを休めるもよし、訪問の記念に、2階受付で売っている仙台文学館オリジナルの絵ハガキなど求めるもよし。

 情報コーナーでは、書籍等の文学館の所蔵品を検索できる。ことになっているのだが、当方の訪問時には「まだ入力途中なのでご迷惑をおかけいたしますが……」というような表示も見受けられた。検索システムの完備が待たれる。また、現状では、文学館のホームページの使い勝手というか閲覧勝手というかも、お世辞にも良好とはいいがたい。案内のチラシにホームページの URL が記載されていないのも、むべなるかな。などと思わず邪推してしまった。将来的には、仙台ゆかりの作家の作品を電子化している「せんだい電子文庫」との積極的かつ効果的な連携にも期待したい。

 最後に、実は展示品よりもこまめにチェックを入れたことについて少々。点字ブロックや点字の館内案内板、スロープ、エレベーター、障碍のある人や乳児連れの人のためのトイレ、簡易ベビーベッド、車椅子やベビーカーの貸出など、ひととおりの配慮はなされている模様。諸設備のバリアフリー度はわりあい高いほうかも。また、文学館スタッフの皆さん、喫茶室のウエイトレスさん、屋内・屋外の清掃をしていたおじさんおばさんたちの、感じの良さも好印象。デジカメ片手に撮影していたら、えらくにこやかな笑顔で手を振ってくれたりなんかしたのでありました。(2000.8.17 かとうかおり)

  ●所在地:〒981-0902 仙台市青葉区北根2-7-1
  ●電話:022-271-3020
  ●開館時間:9:00-17:00(入館は16:30まで)
  ●休館:月曜日(祝日・振替休日の場合は開館)
       休日の翌日(日曜日・祝日の場合は開館)
       月末日
       12/28-1/4
  ●HP:http://www.lit.city.sendai.jp/hp/index-sml.htm

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