第24回

井上靖記念館

 鳥取県の米子市の近く、中海と日本海を隔てる弓ケ浜は、白い砂浜と青い日本海のコントラストが美しく遠くには大山の山を見ることができる景勝地です。そこを走る境港へと向かう国道431号線、米子空港の近くに「アジア博物館」があり、その中に「井上靖記念館」が置かれています。近くに駅はありません。駐車場が広いので車での利用が便利だと思います。

 白壁の塀に囲まれた博物館は、様々な植物(染料や繊維として利用されるものの他に松などの樹木)が植えられている立派な庭園を中心に「染物工房」、「かすり館」、「ペルシャ錦館」、「モンゴル館」、「中国館」、「迎賓館」、「物産館」と複数の建物が建てられています。その中に「井上靖記念館」が建っています。
 この記念館は、隠岐でホテルを経営されている横地治男さんという90歳の会長の方が、井上氏と柔道仲間であったという関係から、設立されたそうです。館長は、井上氏の夫人が務められていることがパンフレットに書かれています。

 記念館の建物は看板がなければ、普通の住宅と思えてしまうような感じの建物です。入口の引き戸を開け中に入ると玄関があり靴からスリッパに履き換えます。入口から正面には画家の平山郁夫氏が書かれた「井上靖記念館」の額が飾ってありました。
 入口から向かって左手が井上氏の応接間を再現した部屋になっており、さらに奥には書斎を再現した部屋が置かれています。応接間は廊下から一歩分だけ踏み込んで中をのぞくことができますが、書斎は見ることができません。書斎を見たい場合には、いちど外へ出てから裏庭を回って窓越しに見る必要があります。館内は写真撮影禁止ですが、フラッシュを焚かないということで一枚だけ撮らせていただきました。
 入口から右側へ進むと二つの展示室があります。小さい方と大きい方があります。小さい展示室には、ハードカバーの書籍の他に新聞に連載された小説のコピーや日常を写した写真パネルなどが展示されています。次に大きい方の展示室ですが、こちらは西域(シルクロード)と井上靖と鳥取とのつながりなどが紹介されています。生前、シルクロードの地に大いに関心のあった井上氏の旅行への携行品が展示され、西域を中心とした写真集、そして作品『蒼き狼』のモンゴル語版の翻訳作品や映画、演劇の資料などが展示されています。
 井上氏と鳥取県とのつながりは、戦時中に妻子を鳥取県日野郡日南町(こちらにも「野分の館」と題された井上靖記念館があります)に疎開させ、彼一人が半年の間行ったり来たりしていたということがあります。疎開の場所が舞台となっている作品『通夜の客』や詩集なども展示されています。
 それ以外の書評や作品の原稿などもガラスケースに入れられて展示されています。ほかには彼の少年時代の写真パネルや家系図などの展示もありますが、前にも書いた横地さんと関係を持つきっかけとなった「柔道」について彼の通っていた四高柔道部についての展示も大きく取られています。
 記念館の脇には横地氏に送られたモンゴルの住宅(ゲル)が二つ建てられており中にもはいることができます。その中で西域に深い関心を持っていた井上氏に想いをはせることもできるかも知れません。

(レポート 田辺浩昭)

●所在地:〒683-0101 鳥取県米子市大篠津町57番地
●電話:0859−25−1251
●開館時間:午前9時〜午後5時
●休館日:年中無休

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