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楽しい電子ルリユール教室-11



(1) 好きな詩を電子本に仕立てる

泉井小太郎

さあ、いよいよ実戦編。
今回は、泉井小太郎講師が青空文庫登録作品から
詩を1編選択。これを、TTZに仕立てる
手順を公開します。
選ばれた作品は、萩原朔太郎「風船乗りの夢」。



 電子ルリユールの楽しさに、一編の詩を一冊の本に仕立てて愛着する――ということがあります。短いとは言え、一編の詩には一つの世界が宿っています。それが詩集に集められているのですが、ここでは逆に、そこから好きな詩を一つ取り出して、独立した一冊の本を作ってみましょう。
 今回選んだのは、萩原朔太郎の「風船乘りの夢」という詩。詩集『定本青猫』に収められています。短いので自分で入力してもいいのですが、テキストが青空文庫に収録してあるので、それを利用します。


1.テキストを入手
 では青空文庫にアクセス、『定本青猫』の図書カードからHTMLファイルを開きます。『風船乘りの夢』という詩を見つけたら、全文をセレクトしてコピーします(ソースを表示させて、そこからコピーしてもかまいません。ルビが多い場合はその方が良いでしょう)。それをT-Timeの新規ファイルにペーストします。
 *(図1)

2.テキストを整える
 ファイルに名前を付けて(ここではfusen.ttx)一旦保存します。そうしないとエディタで編集することが出来ません。T-Timeの編集メニューから「エディタによる編集」をチェック。指定してあるエディタを開きます。ペーストした詩のタイトルと本文がありますので、まずこれをHTML形式の文書にします。
 <TITLE> </TITLE>の間に「風船乘りの夢」と書き込みます。これがT-Timeのタイトル・バーに表示されます。
 ルビ2箇所、傍点1箇所のタグを加えて、テキストを整えます。
  ●叢(くさむら)→<T-R>叢(くさむら)
  ●幻覺(まぼろし)→<T-R>幻覺(まぼろし)
  ●ぜんまい[#「ぜんまい」に傍点]→<T-EM style=accent>ぜんまい</T-EM>
 このステップで保存して、T-Timeのファイル・メニューからリロードして表示確認します。
 *(図2)

3.ブックサイズ
 ブックサイズを変更します。設定メニュー→ウィンドウ→サイズ設定項目で640×480に指定してみます。2行に渡っていた行が減り、詩も1ページに収まってすっきりしました。
 T-Timeの下部のゲージを非表示にします。テキスト編集モードが外れていなかったら、この時に外しておきます。
 詩を美しい表示で読むだけならこれで十分です。
 *(図3)
 でも本としてはもの足りません。タイトルページを独立させたとしても、まだ何か淋しい。このもの足りなさの中で、どうすれば本らしい陰影を生み出すことが出来るのか、あれこれ悩み試行錯誤するところに、ルリユールの面白さがあります。一編の詩、またはテキストがどうすれば本の表情を獲得するか、モニターの上で、ファイルがいかにブックに飛躍していくのか、生みの苦しみをたっぷりと味わうこともあります。でもこの過程でいろんなことを学びます。

4.画像を準備
 今回もなかなかアイデアは湧きませんでしたが、ようやく表紙のイメージが浮かびました。それを画像ソフトで作成します。
 *(図4)
 その前に、気球サイトをWebで巡回したり、「風船おじさん」を検索したりして、気分はふわふわと空中に漂いつつ、空へと昇っていく感じ。気球の籠の中に、朔太郎(の名前)を乗せるというアイデアで、本への上昇を試み始めたのです。
 色彩は淡く(空気よりも軽く)、シンプルに。タイトルは船名のように画像に書き込みました。文字色も読みやすさを犠牲にして、かろやかさを優先。
 エディタで表紙の画像タグと、改ページのタグを書いて表示させます。ちょっと緊張する瞬間です。
 <IMG SRC="ballon.jpg" a=0 x=0 y=0 Width=289 Height=413>
 <T-PB>
 画像のデフォルト表示位置は縦書きの場合右上ですので、中央に配置したい場合はa=0とします。x,y はそれぞれ縦横にピクセル移動させる時の数値です。画像の大きさを記述しておくと表示が早くなります。
 *(図5)


5.ブックレイアウト
 表紙と本文の詩、これで仕上げにかかってもいいのですが、もう一工夫してみたくなりました。間にページを作成、そこに表紙の縮小画像を添えてみました。
 *(図6)
 さらに詩をページ割りして、ふわりふわり気球が昇っていくペースにレイアウト。
 前のページはテキストを中央に配置<T-Middle>したので、詩本文ページは右寄せ<T-Top>にします。
 画像の位置は、a,x,yの数値を変化させ、表示確認しながら細かに詰めていきます。エディタとT-Timeの間を行ったり来たりする作業は、HTMLエディタとWebブラウザを往復する作業と同じです。


6.フォントサイズ、テキストフィールドで最終調整
 ページのバランスを見て、フォントサイズを変更、設定メニュー→本文サイズを16にしました。
 テキストフィールドは、コマンド(アルト)+オプション・キーでアクティブになるので、隅をマウスでドラッグして適当な領域に設定します。タグで指定する方法もありますが、この方が簡単でしょう。
 *(図7)


7.奥付等
 さて、これで本らしくなってきました。残るは本の出生証明書とも言うべき奥付。青空文庫のファイルを利用したので、取り扱い規準に従ってファイル情報も末尾に記載しておきます。
 フォントサイズを75%に指定、設定メニュー→縦中横を2にして半角数字を見やすくします。最後の製作者クレジットは<T-Right>のタグで下揃えにしました。
 *(図8)


8.製本
 これで編集完了です。最初からページを繰ってみて、一冊全体の感覚やらバランスなどを確かめます。校正も念入りに行います。
 最後に、表示メニュー→タイトルバー→タイトルで、「風船乘りの夢」と表示されるよう設定。他にも、設定→ウィンドウでの各項目:
  ●現在の大きさに出現サイズを指定する
  ●指定サイズで出現
  ●モニターの中央に出現
等をチェックしていきます。誤植、設定洩れがなければ、これでTTZ製本、完成です。→hhttp://rokkaku.que.jp/bunko/reliure/fusen.ttz


 T-Timeにはレイアウト上のいろんなタグがあり、必要なタグを全て記述していくと相当細かなことも出来ますが、大体をメニュー・バーでの設定に委せて、足りない部分だけタグを書いていく方法がやりやすいでしょう。まずは短い詩や作品から手がけてみるといいと思います。それもうんと愛着のある作品を。その方がアイデアが出やすく、壁にぶつかった時の悩み・迷いも大きく(笑)、<本>への道を探索するのに粘りもききます。電子本だからこそ、一編の好きな詩を気軽にも深くにもルリユール出来ます。
 「風船乘りの夢」は、はたして本の空へと上昇し、気流に乗ることが出来たでしょうか? 籠に乗せた朔太郎は子午線を越えてゆくことが出来たでしょうか? もっともどこかで失墜して地上に下りてきてしまったとしても、風船を繕い、ガスを満たして、再度打ち上げられるのも電子ルリユールの強みです。

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